広い土地や起伏のある地形、森林や災害現場など、従来の手法では対応が難しかったエリアの測量には、「時間」「コスト」「安全性」など多くの課題がありました。
そうした課題を解決する手段として注目されているのが「ドローン(UAV)レーザ測量」です。これは、レーザの一種であるLiDAR(ライダー)を搭載したドローンを使い、地表にレーザを照射してその反射と位置情報から地形を立体的に捉える技術です。植生を一部透過できる特性があり、山林や災害地でも地面の形状を精密に捉えることができます。
LiDAR(ライダー)とは、レーザ光を使って対象物までの距離を測る技術です。 測量においては、ドローンにLiDARセンサーを搭載し、地上に向けてレーザパルス(光の束)を連続的に照射。地表や構造物に当たって反射したパルスがセンサーに戻るまでの時間をもとに、対象物との距離を正確に算出します。
この仕組みにより、周囲の地形を数千万点もの「点群データ」として記録することが可能です。LiDARは1秒間に十数万点のデータを取得できるため、広範囲の地形を短時間で、かつ㎝単位の精度で立体的に再現できます。
特に優れているのは、植生の隙間を通過して地表面を捉える能力です。森林や雑草の下にある地形を把握できるため、山林や災害現場など、従来の測量が難しかった場所でも精密なデータを取得できます。
LiDARが用いる赤外線レーザは、水中での透過性が低いため、水底の測量には適していません。水域の地形や構造物を詳細に測量したい場合、水中で透過しやすい青緑色の光を使用するグリーンレーザが有効です。
グリーンレーザを搭載したLiDARは、水面だけでなく水底からの反射光も捉え、陸域と水域の地形データをシームレスに結合させることが可能になります。
写真測量は光学カメラを搭載したドローンで上空から地面を撮影し、複数の航空写真をつなぎ合わせて地形情報を取得する手法です。撮影範囲を重複させ、より立体的なデータを取得します。ドローンの位置情報と写真を基に、写真の歪みを修正してつなぎ合わせることで、地形図などを作成できます。
ドローン(UAV)レーザ測量の導入を検討する上で知っておきたい価格相場、メリット・デメリット、測量精度、測量のやり方、標定点に関する情報を、各項目で詳しく解説していきます。ドローン(UAV)レーザ測量の全体像を把握し、導入検討にお役立てください。
ドローン(UAV)レーザ測量を専門業者に依頼する場合、価格相場は内容や規模によって大きく変動します。目安として、写真測量は数十万円~100万円以上、より高精度なレーザ測量は30万円~300万円以上です。自社で内製化する場合は、機材導入に1,000万円以上の初期投資が必要となることも。他にも、測量価格に含まれる内訳などを以下の記事で紹介しています。
ドローン(UAV)レーザ測量には、従来の測量に比べていくつかのメリットとデメリットがあります。
高速かつ高精度な測量が可能で、広範囲を短時間で効率的にデータを取得できます。崩落地や沼地などの危険箇所も非接触で測量でき、作業者のリスクを低減します。取得した点群データ(レーザ測量で得られる、無数の点の集合からなる3Dデータ)は、ノイズ処理から3Dモデル生成、土量計算、図面作成まで一貫して対応し、CIM/BIM連携も可能です。
高性能である分、初期導入コストが高額になります。また、強風や雨、霧などの悪天候時にはレーザの散乱や飛行安定性の低下により、精度が落ちる可能性があります。
メリット・デメリットの詳細は以下をご確認ください。
ドローン(UAV)レーザ測量で取得されるデータは、平面で±1~3㎝、標高で±2~5㎝と高い精度を誇ります。下記の記事では、測量現場別の精度や、測量精度を左右するポイントなどをご紹介します。
ドローン(UAV)レーザ測量を実施するには、高精度なLiDARセンサーを搭載したドローン本体の準備が不可欠です。飛行させるための国土交通省への飛行許可の取得や、測量精度を担保するためのレーザ計測用の対空標識(標定点)の適切な設置などの事前準備が必要となります。
ドローン(UAV)レーザ測量の手順や、活用事例についてご紹介しています。
ドローン(UAV)レーザ測量における標定点は、測量データの高精度化に不可欠な地上に設置される基準点です。ドローンが取得した点群データに、事前に測量された標定点(GCP)の正確な座標を照合・補正することで、データ全体の平面精度と標高精度を飛躍的に向上させます。
下記の記事では、標定点の設置方法や設置間隔、安定して設置するためのポイントなどをご紹介します。
水部を含む複雑な地形を、精密に把握。浅部はグリーンレーザ、深部はソナーを使用することで、河床の起伏を精密に可視化し、公共測量基準レベル500をクリア(※1)。
砂防基盤図など、精密な3D図化が求められる測量に対応。国交省仕様に準拠した図化・地形図作成を、社内技術者が一貫して手がけている。
単に「樹木下の地形を計測」だけでなく樹高・樹種・本数・材積を自社の技術と解析で算出可能。樹種分類や資源量推計専門の技術者チームが、写真測量から材積推計までを大幅に効率化。
標識が置けないような急峻林でも、UAVレーザとドローンを適切に組み合わせ、後処理補正で公共測量基準±5㎝の精度(※2)を実測。
国交省「3D都市モデル整備プロジェクト」で50超の自治体データ(※3)を手掛けるなど、都市インフラ公共測量の行政案件で豊富な実績(※4)あり。
空中写真・レーザ・MMS点群を組み合わせ、壁面や道路脇も“抜け”なく3D化。出来上がったデータはCIM/BIM連携や日影・浸水シミュレーションに活用できる。
※1参照元:エアロ・フォト・センター公式HP(https://kkapc.co.jp/事例紹介/)
※2参照元:FLIGHTS公式HP (https://lidar.flightsinc.jp/lp/liair/)
※3参照元:パスコ公式HP(2025年7月確認時点)(https://www.pasco.co.jp/pickup/plateau/)
※4参照元:IRBANK|株式会社パスコ(2025年7月確認時点)(https://irbank.net/chotatu/5013201004656)