近年、i-Constructionの推進に伴い、河川や海岸管理において水中部の3次元データ化が急務となっています。その有力な手法が「グリーンレーザ測量」ですが、現場担当者を悩ませるのが「水の濁り(濁度)」です。本記事では、濁度が測量精度に与える影響や、計測可能な限界値、成功させるためのポイントを専門的視点で解説します。
グリーンレーザ測量(ALB:Airborne LiDAR Bathymetry)は、赤外線レーザとグリーンレーザの2種類を照射することで、水面と水底の両方を計測する技術です。しかし、水質条件によってその精度は大きく左右されます。
一般的に、光は水に吸収されやすい性質を持っていますが、波長によってその透過率は異なります。赤外線レーザは水面に当たるとほとんどが吸収・反射されるため、水面の高さを測るのに適しています。
一方で、波長が532nm(ナノメートル)付近の緑色光(グリーンレーザ)は、水による吸収が少ない可視光の透過帯(ブルーグリーン帯)に属しています。この特性があるため、グリーンレーザは水中を通り抜け、水底まで到達し、反射して(センサーへ)戻ってくることが可能なのです。
濁度とは、水中に含まれる浮遊物質によって光が散乱・吸収される度合いを指します。レーザ光がこれらの微粒子に当たると、光は四方八方に拡散してしまいます。これにより、水底に届く前にエネルギーが減衰したり、浮遊物質からの反射がノイズとなって水底の信号をかき消したりします。これが、視覚的に濁っている現場において「測れない」と言われる主な物理的な理由です。
航空機搭載型の高出力モデルでは透明度の約2倍から3倍と言われていますが、ドローン搭載型の一般的なグリーンレーザの場合、透明度の約1倍から1.5倍程度(最大で2倍程度)が計測可能な水深の目安となります。
例えば、透明度板を用いた調査で透明度が2mの結果が出た場所であれば、水深2mから3m程度(最大で4m程度)までは計測できる可能性があります。濁度の単位であるNTUや「度」で言えば、一般的なドローン搭載型グリーンレーザの場合、5NTU以下であれば安定して良好なデータが得られやすいとされています。
10NTUを超えると急激に欠測のリスクが高まりますが、近年の高出力モデルでは、短距離から照射することでこれ以上の濁度でも計測に成功した事例が増えています。
計測の可否は、濁度そのものだけでなく「濁度と水深の掛け合わせ」によって決まります。例えば、多少濁りが強い現場であっても、水深が1m前後の極めて浅い場所であれば、レーザ光が減衰しきる前に底まで届く可能性が十分にあります。
逆に、非常に透明度が高い海域であっても、水深が20mから30mを超えるような深場では、わずかな浮遊物でも長距離を通過する間に光が減衰し、反射光がセンサーまで戻ってこなくなります。このように、現場の深さと濁りのバランスをセットで評価することが不可欠です。
近年のグリーンレーザシステムは、戻ってきたレーザの波形全体を記録するフル波形解析(Full Waveform Analysis)という高度な技術を採用しています。これは、水中の浮遊物質による細かな反射と、水底からの反射を波形データから見極め、計算によって判別する手法です。この技術の進化により、以前であればノイズとして一括りにされていた濁った環境下でも、精度の高い水底形状を抽出できるようになっています。
河川測量の場合、降雨後は上流から泥砂が流れ込み、一時的に濁度が急上昇するため計測には向きません。また、沿岸部では潮汐によって砂が巻き上げられるタイミングも考慮する必要があります。
プロジェクトを成功させるには、数日間晴天が続いた後や、植物プランクトンの発生が少ない時期を狙うといったスケジュール管理が重要です。事前踏査として濁度計や透明度板を用いて現場の数値を把握しておくことで、計測の可否を論理的に判断できるようになります。
機材のスペック選びも重要な要素です。ドローン搭載型は航空機型に比べて低い高度から照射できるため、空中や水中でのエネルギー減衰を抑制できるという利点があります。現場の条件に合わせて、毎秒のパルスレートが高いものや、レーザの出力クラスが十分な機材を選定する必要があります。
特に、浅水域の解像度に特化したセンサーなのか、あるいは深くまで届くパワー重視のセンサーなのか、目的に応じた適切なデバイス選びが精度を左右します。
計測によって取得した生の点群データには、少なからず濁りによるノイズが含まれます。このノイズをいかに精度良く取り除くかが、解析技術における重要ポイントです。
AIによる自動フィルタリングを活用しつつも、最終的には現場の地形を熟知した技術者が断面を確認しながら手動で補正を行うことで、信頼性の高い3次元モデルが完成します。実績豊富な業者を選ぶべき理由は、この「解析プロセス」の質の高さにあります。
グリーンレーザ測量における濁度は、かつては大きな技術的障壁でしたが、現在はセンサーと解析アルゴリズムの進化により、克服できる範囲が大きく広がっています。
ただし、現場ごとに水深や流速、濁りの質は千差万別です。計画の失敗を防ぐためには、検討段階で現場の状況を詳細に共有し、対応可能な機材と実績を持つ専門業者にコンサルティングを依頼することが、プロジェクトを成功へ導くための近道となります。
水部を含む複雑な地形を、精密に把握。浅部はグリーンレーザ、深部はソナーを使用することで、河床の起伏を精密に可視化し、公共測量基準レベル500をクリア(※1)。
砂防基盤図など、精密な3D図化が求められる測量に対応。国交省仕様に準拠した図化・地形図作成を、社内技術者が一貫して手がけている。
単に「樹木下の地形を計測」だけでなく樹高・樹種・本数・材積を自社の技術と解析で算出可能。樹種分類や資源量推計専門の技術者チームが、写真測量から材積推計までを大幅に効率化。
標識が置けないような急峻林でも、UAVレーザとドローンを適切に組み合わせ、後処理補正で公共測量基準±5㎝の精度(※2)を実測。
国交省「3D都市モデル整備プロジェクト」で50超の自治体データ(※3)を手掛けるなど、都市インフラ公共測量の行政案件で豊富な実績(※4)あり。
空中写真・レーザ・MMS点群を組み合わせ、壁面や道路脇も“抜け”なく3D化。出来上がったデータはCIM/BIM連携や日影・浸水シミュレーションに活用できる。
※1参照元:エアロ・フォト・センター公式HP(https://kkapc.co.jp/事例紹介/)
※2参照元:FLIGHTS公式HP (https://lidar.flightsinc.jp/lp/liair/)
※3参照元:パスコ公式HP(2025年7月確認時点)(https://www.pasco.co.jp/pickup/plateau/)
※4参照元:IRBANK|株式会社パスコ(2025年7月確認時点)(https://irbank.net/chotatu/5013201004656)