ドローンのグリーンレーザ測量とは、532nmの緑色光を使用し、陸上から水底までをシームレスにデータ化する技術です。従来の赤外線レーザでは困難だった水中測量や深浅測量をドローンで安全に行えるため、河川や海岸管理の現場で注目されています。本記事では仕組みや濁度の影響、メリットを基礎から解説します。
ドローンのグリーンレーザ測量は、光の特性を利用して水面を透過し、その下の地形をスキャンできる点が特徴です。
従来のドローン測量で主流だった近赤外線レーザは、水面に当たるとエネルギーが吸収され、水底まで届きにくい性質があります。これに対し、グリーンレーザは水中を透過しやすい性質を持っているため、空中から一度のフライトで「陸地」と「水底」を同時に計測できる場合があります。
これにより、これまで分断されていた陸域・水域のデータを高精度に統合できるようになりました。
水中測量を可能にしているのは、レーザの波長の特性です。測量で一般的に使われる近赤外線レーザ(波長約1,064nm)は水に吸収されやすい性質があります。一方、緑色の可視光(波長約532nm)は、水中を透過しやすい波長帯にあります。ただし、水の濁りや透明度などの条件によって、計測できる深さは変わります。
ドローンから照射されたグリーンレーザは、一部が水面で反射し、残りが水中を透過して水底で反射します。この水面からの反射信号と水底からの反射信号が戻ってくる時間の差を、水の屈折の影響などを考慮して処理することで、水深や水底地形を算出します。
グリーンレーザによる水中計測は、有人航空機に搭載する航空レーザ測深(ALB:Airborne Laser Bathymetry)でも利用されてきました。ドローン搭載型は、有人航空機と比べて比較的狭い範囲を機動的に計測しやすく、現場の状況に応じて使い分けられています。
有人航空機によるALBは、広い範囲を上空から面的に計測する用途に適しています。一方、ドローン搭載型は、比較的狭い範囲を低高度から計測できるため、河川や港湾、堰堤周辺など、局所的な地形を詳細に把握したい現場で活用されています。計測範囲や必要な精度、現場へのアクセス性などを踏まえて、適した計測方法を選ぶことが重要です。
グリーンレーザスキャナは機種によって重量や必要なペイロード、飛行時間などが異なるため、搭載するドローンとの組み合わせを確認する必要があります。陸域と水域を一体的に計測する場合は、GNSS/IMUの性能、レーザの発射レート、飛行高度と点密度の関係なども機材選定時に確認しておくとよいでしょう。
グリーンレーザの導入は、従来の深浅測量が抱えていた課題を解決します。
従来、水深を測る深浅測量は、ボートに音響測深機を搭載して行うのが一般的でした。しかし、浅瀬や岩礁地帯、急流などはボートが座礁・転覆する危険があり計測が困難でした。ドローンを利用することで、水域に測量船を進入させずに上空から計測が可能です。
陸上部と水中部を同時に計測できるため、それぞれを別々に測量する場合と比べて、陸域・水域のデータを連続して把握しやすくなります。国土交通省の技術資料でも、無人航空機搭載型グリーンレーザスキャナを活用して、陸部・水中部をシームレスに把握する方法が紹介されています。
グリーンレーザ測量において、重要なのが濁度(だくど)です。レーザ光は光であるため、水が濁っていると水中の浮遊物質によって光が散乱・吸収され、水底まで届かなくなります。
計測限界の目安として、透明度に対して一定の深さまで測深できるとされますが、実際の測深能力は機材や対地高度、水質、濁度などによって変わります。透明度の約1.5倍程度を目安として紹介されるケースもありますが、現場条件によってはそれより浅くなる場合もあるため、事前の水質確認が重要です。
濁度が高い水域や泥水、気泡が多い場所では、水底からの反射信号を取得しにくくなり、水深が浅くても計測できない場合があります。測量実施前に現地の水質や透明度を確認し、計測可能な条件かどうかを検討することが重要です。
グリーンレーザ測量を業者に発注する際は、計測範囲や精度、成果物などの条件を事前に確認しておくことが重要です。公共測量としての基準や手続きについては既存の「作業規程の準則対応」セクションで解説していますので、ここでは発注時に確認しておきたい項目を整理します。
必要な点密度、要求する垂直・水平精度、飛行高度、標定点の配置、計測範囲、成果物の形式などを事前に確認します。成果物には点群データや水深データ、陸域と水域を統合した3次元データなどがあり、必要なデータ形式や内容は発注時に業者とすり合わせておくとよいでしょう。公共測量として実施する場合は、国土地理院の「作業規程の準則」など、適用される基準を確認したうえで仕様を設定します。
グリーンレーザ機材の保有状況や計測実績に加えて、近赤外レーザとグリーンレーザを組み合わせた陸水一体計測への対応可否も確認しておくとよいでしょう。また、河川・海岸・ダムなど、計測対象とする現場に近い実績があるか、水質や地形などの現場条件を踏まえて計測方法を提案できるかも確認しておきたいポイントです。
現場の状況に応じて、グリーンレーザと近赤外線レーザを適切に使い分ける必要があります。
| 項目 | グリーンレーザ | 近赤外線レーザ |
|---|---|---|
| 主な波長 | 約532nm(可視光・緑) | 約1,064nm(近赤外線) |
| 水への透過性 | あり(水中測量が可能) | なし(水面で吸収・反射) |
| 主な計測対象 | 河床・海床・水際・植生 | 道路・建物・森林地形 |
| 計測特性 | 陸域と水域を一体的に計測できる | 陸上の地形や構造物などの計測に適している |
グリーンレーザは水域を含む計測に対応できる点が特徴です。一方、陸上のみを対象とする場合は、近赤外線レーザなど、陸上計測を主な対象とするレーザ測量が選択肢になります。
近赤外レーザとグリーンレーザは得意とする計測対象が異なります。そのため、河川や海岸のように陸域と水域が隣接する現場では、両者を組み合わせて陸上から水面下まで連続的に計測する方法も利用されています。
近赤外レーザとグリーンレーザを同時に搭載したシステムでは、1回の飛行で堤防や河岸などの陸上部と、水面下の河床・海床を計測できます。近赤外レーザで陸上部を、グリーンレーザで水面下を計測し、それぞれで取得したデータを後処理によって統合することで、陸域と水域を連続した3次元データとして把握できます。
河川管理では、堤防や河岸などの陸域から河道・河床までを連続して把握することで、河川の地形状況や河床の変化などを面的に確認できます。
一般的には、陸上を中心に計測する場合は近赤外レーザ、水域の測深を重視する場合はグリーンレーザ、陸域と水域を連続して計測したい場合は両者を組み合わせたシステムが選択肢になります。ただし、必要な精度や水質、地形、計測範囲などによって適した機材は異なるため、現場条件に応じて選定することが大切です。
ドローンによるグリーンレーザ測量では、532nmの可視光を使用する機材があるため、使用するレーザ機器のクラスや出力などを確認し、適切な安全管理を行う必要があります。JIS規格のレーザクラス分類や現場での安全対策、機材選定時の確認ポイントについて解説します。
ドローン搭載型グリーンレーザスキャナを活用した河川測量では、水中と陸上の地形データを取得できます。実際の導入事例では、UAVグリーンレーザ測量とマルチビーム測深を組み合わせ、浅水域を含む水陸の3次元データを取得した事例もあります。国土交通省のi-Construction大賞では、このような測量技術の活用による作業効率の向上が評価された事例も紹介されています。
グリーンレーザ測量は水部と陸部を同時計測できる一方、水面・水中ノイズが発生しやすい課題があります。ノイズの放置は標高誤差や品質低下を招くため、自動フィルタリングと担当者の目視・手作業を組み合わせた段階的な後処理が不可欠です。完全に自動化することは難しく、適切な閾値設定やクラス分けの技術が求められます。
グリーンレーザ測量は河川管理や海岸保全だけでなく、ダム貯水池やため池などの水域を含む現場でも活用されています。ここでは、河川・海岸以外の活用例と、グリーンレーザの計測が難しい条件について紹介します。
ダム貯水池では、貯水池内の地形を計測し、堆砂状況などを把握するための測量にグリーンレーザを活用した事例があります。また、農業水利分野では、ため池などの陸域と水域を含む地形計測に利用され、施設の現況把握や維持管理に必要な基礎データの取得に活用されています。
河川の増水や浸水などによって陸域と水域が混在する被災箇所でも、計測条件が適していれば、グリーンレーザによって上空から地形を面的に把握できます。現地への立ち入りが難しい場所でも、ドローンを活用して上空から3次元データを取得できることが特徴です。
グリーンレーザは、水の濁りや透明度、浮遊物、気泡、水草・藻類などの影響によって、水底からの反射信号を取得しにくくなる場合があります。また、水深が深くなるほど水中でレーザが減衰するため、計測できる深さには限界があります。このような条件では、音響測深など、グリーンレーザとは異なる原理を利用した測深手法の併用・検討が必要です。
公共測量としてUAVグリーンレーザ測量を実施する場合は、国土地理院の「作業規程の準則」など、適用される基準を確認する必要があります。発注や業者選定の際は、必要な精度や点密度などの測量条件を満たせるか、使用する機材やデータ処理方法を確認することが重要です。
ドローンのグリーンレーザ測量は、これまで船(水中)と地上に分断されていた測量をひとつに繋ぐソリューションです。水の濁度という自然条件に左右される側面はありますが、水中測量・深浅測量のハードルを大きく下げ、インフラ管理の精度向上に寄与しています。
Qグリーンレーザは、なぜ水面下を測れるのですか?
グリーンレーザは水中を比較的通りやすく、水底から戻った光を捉えられるためです。
水面からの反射と水底からの反射の時間差を手掛かりに深さを求め、水中で光が曲がる影響も補正します。 水が濁ると光が散乱・減衰し、水底に届く光や戻る光が弱くなります。そのため水深だけでなく、水質や底質によって測れる範囲が変わります。
Q河川なら、グリーンレーザだけで陸上と水中を一度に測れますか?
条件が合えば、河岸から浅い水底まで一体で計測できます。
陸と水の境界を同じ計測で捉えられるのが利点ですが、深い場所、濁りや泡のある場所、水面下の遮蔽物の陰は欠測し得ます。 「河川だから全部測れる」と考えず、必要な水底範囲と想定水深を先に示します。欠測を許せない場所には音響測深や現地測量の併用を計画します。
Qグリーンレーザ測量は、どのくらい深い水まで測れますか?
グリーンレーザで測れる深さを、一つの数値では示せません。
光が水底まで届いて戻る強さは、水の透明度、波・泡、底の反射しやすさ、センサー性能に左右されます。同じ水深でも現場が違えば取得できる水底点が変わります。 対象地点の水質とおおよその水深を伝え、似た条件での取得実績か試験計測で、必要範囲を測れるか確かめます。
Qグリーンレーザ測量を依頼するとき、現地で測っておくとよい情報はありますか?
水深だけでなく、水の濁りと流れ、波の状態が分かると計画しやすくなります。
水位・潮位が変わる場所では、いつの水面を基準にするかも重要です。底質や水草、泡の有無によって水底点の取りやすさも変わります。 現地で新たに測れない情報は、既存の水深図や写真、過去の水質・水位記録でも役立ちます。欲しい陸上・水中の範囲図と一緒に共有します。
水部を含む複雑な地形を、精密に把握。浅部はグリーンレーザ、深部はソナーを使用することで、河床の起伏を精密に可視化し、公共測量基準レベル500をクリア(※1)。
砂防基盤図など、精密な3D図化が求められる測量に対応。国交省仕様に準拠した図化・地形図作成を、社内技術者が一貫して手がけている。
単に「樹木下の地形を計測」だけでなく樹高・樹種・本数・材積を自社の技術と解析で算出可能。樹種分類や資源量推計専門の技術者チームが、写真測量から材積推計までを大幅に効率化。
標識が置けないような急峻林でも、UAVレーザとドローンを適切に組み合わせ、後処理補正で公共測量基準±5㎝の精度(※2)を実測。
国交省「3D都市モデル整備プロジェクト」で50超の自治体データ(※3)を手掛けるなど、都市インフラ公共測量の行政案件で豊富な実績(※4)あり。
空中写真・レーザ・MMS点群を組み合わせ、壁面や道路脇も“抜け”なく3D化。出来上がったデータはCIM/BIM連携や日影・浸水シミュレーションに活用できる。
※1参照元:エアロ・フォト・センター公式HP(https://kkapc.co.jp/事例紹介/)
※2参照元:FLIGHTS公式HP (https://lidar.flightsinc.jp/lp/liair/)
※3参照元:パスコ公式HP(2025年7月確認時点)(https://www.pasco.co.jp/pickup/plateau/)
※4参照元:IRBANK|株式会社パスコ(2025年7月確認時点)(https://irbank.net/chotatu/5013201004656)