ドローン(UAV)レーザ測量において、高精度な成果を得るために不可欠な「標定点(GCP)」。この地上に設けられた基準点が、LiDAR測量において極めて重要な役割を担います。本記事では、ドローン(UAV)レーザ測量における標定点の重要性とその具体的な活用法を詳しく解説します。
標定点は、一般的に「GCP(Ground Control Point)」とも呼ばれ、測量対象エリアの地上に設置される位置座標が確定しているポイントを指します。
ドローンに搭載されたレーザスキャナー(LiDAR)は、自身が飛行している位置情報(GNSS情報)と機体の姿勢情報(IMU情報)に基づいて、点群データを取得。しかし、センサー情報だけでは地球上の正確な地理座標系に直接結びつけるには限界があり、誤差が生じる可能性があります。
標定点の正確な位置座標(緯度・経度・標高)は、事前に高精度な測量機器で計測され、ドローンが取得する点群データの中にも記録されます。
後処理では、点群データ内の標定点と事前に計測された座標を照合することで、データ全体を信頼性の高い地理座標系に補正。これにより、平面精度(水平方向の正確さ)と標高精度(高さ方向の正確さ)が向上します。精度の確保された成果物は、設計や施工、災害対策、資源管理など幅広い分野で活用され、品質と信頼性を支える基盤となります。
ドローン(UAV)レーザ測量における標定点設置は、正確なデータ取得に不可欠な工程です。標定点の具体的な設置方法や、適切な間隔の目安について解説します。
標定点には、ドローンから視認しやすいように設計されたターゲットマーカーを使用します。
| 十字型・円形ターゲット | 白黒のコントラストがはっきりしていて空撮画像から自動認識しやすいデザイン。 ビニールシートやアルミ複合板などが用いられる |
|---|---|
| 測量鋲(びょう) | コンクリートやアスファルトに打ち込むタイプ。長期的な使用に向く |
取り付けは、風で飛ばされないようにペグや重りを使用したり、地面に直接塗装する方法があります。マーカーの中心が正確な座標点となるように慎重に設置しましょう。
設置した標定点の正確な3D座標(緯度、経度、標高)は、高精度なGNSS測量機器(RTK-GNSSやPPK-GNSS)を用いて計測します。
標定点の設置は、国土地理院の「UAVを用いた公共測量マニュアル」で基準が示されています。測量範囲全体の精度を確保するために、次のような配置が推奨されています。
| 外側標定点 | 測量範囲を囲むように四隅に配置 隣り合う点の間隔は 100m以内 |
|---|---|
| 内側標定点 | 測量範囲の中央など内部に設置 外側標定点との距離は 200m以内 |
広い測量範囲では、精度を安定させるために四隅と中央を基本として配置し、必要に応じて中間点を追加して均等に分布させることが推奨されています。また、標定点の設置は、成果を確認するための「検証点」と組み合わせて計画的に行うと、より確実に精度を担保できます。
ドローン(UAV)レーザ測量において、標定点はデータの精度を決定づける重要な要素です。ただ設置するだけでなく、配置方法や環境への配慮が、測量結果の品質に大きく影響します。
標定点は、測量範囲の四隅と中央、そしてその間にバランス良く配置することで、全体的に均一な精度を確保できます。もし標定点が特定の場所に偏って配置されていると、その場所から離れたエリアでは補正の精度が低下し、測量データに空間的な歪みが生じる可能性が高まります。
地形に高低差がある場合、標定点を高所と低所の両方に含めて配置することが、特に標高精度の確保において重要です。山間部の測量では、山頂付近と谷底付近の両方に標定点を設置します。これにより、レーザスキャナーが計測した鉛直方向の誤差を効果的に吸収し、全体の標高データをより正確に補正することが可能になります。
標定点は、ドローンが上空から撮影・計測する際に、樹木、建物、電柱などの障害物によって隠れない場所に設置しなければなりません。もし標定点が障害物の影になってしまったり、部分的にしか見えない状態であったりすると、正確な位置を特定することが困難になり、結果として測量データの補正精度が大幅に低下します。
設置場所を選定する際には、ドローンの飛行経路や日照条件も考慮し、終日を通して標定点が明確に視認できる位置を見極めることが重要です。GNSS測量機器で座標を計測する際にも、周囲に高層ビルや崖がなく、衛星からの信号が良好に受信できる見通しの良い場所を選びましょう。
標定点は、測量作業中に移動したり、風で飛ばされたりしないよう、安定した地面に設置することが重要です。地面に直接設置する場合、地面の凹凸や傾斜が、標定点中心の正確な位置特定に影響を与えるケースがあります。これを避けるために、三脚や専用の架台を用いて標定点を地面から少し浮かせて設置する方法も有効です。
標定点を地面の凹凸から切り離し、水平かつ安定した状態で設置することで、より正確な3D座標を確保できます。
ドローン(UAV)レーザ測量における標定点設置は、高精度なデータ取得に不可欠な工程ですが、いくつかの課題も伴います。これらの課題を事前に理解し、適切な解決策を講じることで、測量作業をより効率的かつ正確に進められます。
標定点の設置作業は、測量エリアの広さや地形、設置する標定点の数に応じてかなりの時間を要する場合があります。特に広範囲の測量や、アクセスが困難な場所での作業では、移動時間やGNSS測量機器による正確な座標計測に時間を取られる可能性もあります。
この課題に対する解決策としては、測量計画段階で効率的な標定点配置を徹底することです。また、複数人で作業を行い、計測と設置を並行して進めるなど、人員配置を最適化して時間短縮を図れます。事前にターゲットマーカーの準備を徹底し、現場での作業時間を最小限に抑える工夫も有効です。
雨、風、霧などの悪天候は、標定点設置後の位置ずれや、ドローンによるデータ取得時の誤差発生リスクを高めます。強風が設置したマーカーを移動させたり、雨や霧でGNSS信号の受信精度を低下させたり、ドローンからの視認性を悪化させたりすることで、正確なデータ取得が困難になるのです。
天候による課題は、PPK補正と呼ばれる技術を用いる方法で、GNSSデータの後処理による高精度な位置補正が可能になり、悪天候下での精度低下をある程度抑制できます。
しかし、基本的には悪条件での測量は避け、天候が安定している時に実施することが推奨される対策です。リスクを抑えつつ高精度な測量成果を得るためには、無理な作業は行わないという判断も重要だと理解しておきましょう。
このサイトでは、ドローン(UAV)レーザ測量が活用されている「森林」「河川」「災害現場」それぞれの事例を紹介しています。
従来の測量では難しかった地形で、どのように活用されているのかを知りたい方は、ぜひご覧ください。
水部を含む複雑な地形を、精密に把握。浅部はグリーンレーザ、深部はソナーを使用することで、河床の起伏を精密に可視化し、公共測量基準レベル500をクリア(※1)。
砂防基盤図など、精密な3D図化が求められる測量に対応。国交省仕様に準拠した図化・地形図作成を、社内技術者が一貫して手がけている。
単に「樹木下の地形を計測」だけでなく樹高・樹種・本数・材積を自社の技術と解析で算出可能。樹種分類や資源量推計専門の技術者チームが、写真測量から材積推計までを大幅に効率化。
標識が置けないような急峻林でも、UAVレーザとドローンを適切に組み合わせ、後処理補正で公共測量基準±5㎝の精度(※2)を実測。
国交省「3D都市モデル整備プロジェクト」で50超の自治体データ(※3)を手掛けるなど、都市インフラ公共測量の行政案件で豊富な実績(※4)あり。
空中写真・レーザ・MMS点群を組み合わせ、壁面や道路脇も“抜け”なく3D化。出来上がったデータはCIM/BIM連携や日影・浸水シミュレーションに活用できる。
※1参照元:エアロ・フォト・センター公式HP(https://kkapc.co.jp/事例紹介/)
※2参照元:FLIGHTS公式HP (https://lidar.flightsinc.jp/lp/liair/)
※3参照元:パスコ公式HP(2025年7月確認時点)(https://www.pasco.co.jp/pickup/plateau/)
※4参照元:IRBANK|株式会社パスコ(2025年7月確認時点)(https://irbank.net/chotatu/5013201004656)